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建築家とは

  • 実用性を満たすだけでなく美的感動を目標に設計する人
  • 建築士の資格を持っている人
  • 自由で独立した立場で設計・監理をしている人

建築とは?

 辞書を引くと建築家は次のように説明されています。【建築家=建築の設計・監理を職業とする人】

 それでは、ここに出て来る建築という言葉の意味は何でしょうか。人が中に入れるような建物はすべて建築なのでしょうか。

 建築史家ニコラス・ペヴスナーは「自転車小屋も建物であり、リンカーン大会堂もひとつの建築である。人がはいるのに十分な広さを取り込んだものは、ほとんどすべて建物(building)であるが、建築(architecture)という言葉は美的感動を目標に設計された建物のみに用いられる」と述べています。つまり、建築と建物を区別し「建築」とは単に実用性を満たすだけではなく美的表現をもった建物(空間)であると規定したわけです。

 建築家という言葉の規定のしかたはいくつかありますが私達は上に述べた意味での「建築」の設計・監理を職業としている人を「建築家」の第一の条件にしたいと考えます。

設計・監理とは?

 次に設計・監理という言葉がよくわかりません。設計という項目を辞書で見ますと【設計=或る製作・工事などにあたり、その目的に即して工費・敷地・材料及び構造上の論点などの計画を立て図面その他の方式で明示すること】とでています。また、監理の項目には【監理=工事監理のこと。工事が設計図書通り実施されているか確認する業務をいう】となっています。

 それでは、誰でも建築の設計・監理ができるのでしょうか。

 現在、日本には建築基準法及び建築士法という法律があり、建築物の設計及び監理は建築士でなければできないことになっています。建築士は三つの段階に分かれ、それぞれの建築士がたずさわることのできる建築物の種類と規模の範囲が定められています。一級建築士、二級建築士・木造建築士というのがそれです。

 建築士は国家資格で、一番レベルの高い一級建築士の場合、大学の建築または土木関係の四年制の課程を卒業した後、建築の実務経験を二年して初めて国家試験の試験資格ができ、それに合格して建築士の資格を得ることができます。従って法律的に見た場合、建築士の資格を持っているという事が建築家の第二の条件になります。

フリーアーキテクトとは?

 第三に社会的な立場から見た場合の条件です。世界のどこの国でもそうですが、昔は建築家という職業はなく日本では大工の棟梁、西欧では石屋の親方(マスターメーソン)が設計者と施工者の両者を兼ねていました。

 絶対的な権力を持つ封建領主や国王のもとでは近代的な意味での建築家は必要なかったのです。西欧でも建築家の職能が確立したのは近代市民社会、資本主義社会が確立してからです。

 絶対的な権力のない社会で、利潤を生み出すための自由競争が行われた結果、さまざまな社会的な弊害が発生しました。例えば、乱開発や都市環境の悪化や危険な建物の建設などです。

 それに村するチェック機構として社会が生み出したシステムのひとつが近代の建築家の職能と考えられます。そのためには建築家の自由と独立性が尊重されなくてはなりません。なぜなら、建築の設計・監理以外に本業があるような組織(例えば開発事業や不動産売買をしている会社)に所属している建築士は、その立場上、社会的に公正な判断がしにくくなる場合も考えられるからです。従って「建築家」の第三の条件は由由で独立した立場を守って、建築の設計・監理を唯一の職業としている人(フリーアーキテクト)ということになります。