このケースでは容積をA敷地からB敷地に160坪分を売却することになります。そのためB敷地所有者は購入代金を支払う代わりにA敷地に地役権設定を行うのがよいでしょう。
 改正された建築基準法では連担するための基準は明確にしておらず、細目は特定行政庁の判断にまかせており、東京都では他の行政庁に先駆けて連担する区域の面積は500u以上とするなどの認定基準の考え方を制定しましたが、各行政庁に問い合わせてみるのがよいでしょう。

 最近、空中権売買が可能になったと聞きましたがどのようなことなのでしょうか?


土地所有者が土地を利用する権利は、土地の地下から上部空間にも及びます。特に「土地の上の空間だけを利用する権利」を空中権といいますが、法律的には正式の名称とされていません。
土地の上部空間を利用するケースとしては、送電線や建物と建物をつなぐ渡り廊下、人工地盤上の建物などがありますが、ある土地の上部空間の利用権を他の土地で実現することに対して容積率の移転と明記されます。特に第三者間で容積が移転する場合、上空の利用権利の移転が伴うため、空中権の移転といってよいでしょう。さらに第三者間で容積が移転する場合はそれに伴う対価が発生するはずで、それを空中権売買と呼ぶのです。

これまでも都市計画法の中で定められている「特定街区」や「一団地認定による総合的設計」により容積の移転は可能でしたが、主として新築建築物にのみ適用されるものでした。ところが平成11年5月1日より施行された建築基準法の改正で盛り込まれた『連担建築物設計制度』は隣り合う2つ以上の敷地が連担することにより全体を一敷地と考えて容積率を満足すれば良いという制度です。
具体的には次のように考えます。
建物を建築する場合、土地の面積に対して何倍までの面積が使用できるかという、開発許容限度が建築基準法により指定容積率として定められているため、無限に建物の階数を増やすことはできません。
さらに建築基準法では、容積率が指定されているにもかかわらず、前面道路幅員による容積率制限があり、住居系地域では前面道路幅員×0.4、それ以外の地域では0.6をかけて、指定容積率とこの計算結果のうち、低い方の値を許容容積率として採用することになっています。そのため、指定容積率が400%だとしても前面道路が4mである商業地域では、240%(4m×0.6)しか容積を使用することはできません。
 図1を見てください。このケースでは、Aの土地は240%、Bの土地は400%までが許容容積率となるため、Aの土地では240坪、Bの土地では400坪の規模の建物が建築可能です。ところがAとBが連担することにより全体の敷地が400%の許容容積一杯まで建てられるようになります。その結果A敷地に240坪(容積率240%使用)の既存建物があったとすれば、未利用分の160坪(容積160%分)がB敷地に建築する建物に上乗せできるのです。


  









 空中権売買で余剰容積の移転の具体的なケースではどのようなものが考えられますか?


活用方法として一番ポピュラーな、裏通りに面している土地の余
剰容積を表通りに面している土地に移転するケースについて考
えてみます。

@ 虫食い地揚げ地の売却
  よく裏通りにある虫食い地揚げ地において、許容容積を残し
 指定容積との差容積を表地に移転し売却価額分を差し引いて
 安く売りに出 す。

A 都心住居の建て替え
  都心に住み続けたいが防火地域のため木造では建て替えら
 れない。建て替えるにしても資金がない人に余剰容積を売却し
 て、その売却益を家を建て替え資金に充当する。 

B 神社・寺院など歴史的建造物の修復・建て替え
 神社の境内地 や寺院の墓地には容積が未使用のまま残って
 いる。将来的にも使用することがないので容積を全て売却し、
 その売却益で本殿の修復や建て替えを行う。(このケースにつ
 いては、隣地でなくとも一定の高度商業地域内において容積を
 移転できるよう改正が検討されており、アメリカではよく利用さ
 れている手法です)

C マンションの大規模修繕
  建築基準法の改正でマンションの共用部分が容積から除外さ
 れたため、改正以前のマンションでは10%位の余剰容積が生じ
 ている。その容積を売却して売却益で大規模修繕を行う。

D不良土地と借金返済
  バブル時に購入した土地が値下がり借金だけ残った人は多
 い。その土地の容積を全て売却して売却益を借入金の返済に
 充当し土地は駐車料金収益を返済に充てる。容積の売却先が
 マンションであればマンション用の駐車場として賃貸すれば固
 定資産税は1/6に減額される。
 

E 不良建物の資産対策
  古いビルや古アパートは現在の容積を充足していないものが
 多い。建て替えるには立ち退きが必要だが資金もない。そのよ
 うな場合、余剰容積を売却して立ち退き資金に充当するか、売
 却益で他の資金運用を行う。

F公共施設の建設
  公園や学校などの公共施設には空き地が多く容積が残って
 いる。この容積を北側敷地に移転して、その売却益を施設建設
 に使う。(このケースはニューヨークでかなり前から使われてい
 る)

G その他
  日照地と日影地、平面地と斜面地、望地と裏地、水際地と裏
 地、高圧線下と線下外地など容積率を移転させることにより、
 双方の土地所有者にメリットがあるケースはいろいろと考えら
 れるのではないでしょうか。

  このようにして容積が移転した場合の、売買の価格を考えて
 みるとどうなるでしょう。

例えば裏敷地の未使用容積を表敷地に移転するタイプでは表
 敷地では裏敷地の価格で容積を購入することができるはずで
 す。しかし、容積の対価は土地の売買と同様お互いの合意が
 条件ですから、双方の利害が調整された価格になり評価額の
 計算式はありません。
  但し、固定資産税・相続税の評価は減額あるいは増額される
 べきであり評価基準の改正も今後は行われるべきでしょう。



空中権売買で容積を取得する時に注意する点がありますか?


容積の移転では、どんなケースでも可能ということではなく、運用
基準の細目は特定行政庁の判断にまかせています。東京都の
基準の主な概要は次の通りですが、市街地形成に良好な環境
確保がなされるものについては弾力的に取り扱うものとされてい
ます。

@ 区域の面積は500u以上とする。(2以下の戸建住宅等の場
 合を除く)

A 新築する建築物は耐火建築物又は準耐火建築物とする。(戸
 建住宅や既存建築物を除く)

B 区域面積が3000u未満の場合は外周の1/6以上が幅4
 m以上の道路に接すること、区域面積が3000u以上の場合
 は外周の1/4以 上が幅6m以上の道路に接すること。

C 専用住宅の計画の場合を除いて、区域内に幅員4m以上の
 通り抜け通路を配置する。

D 住居系地域内で20m、住居系地域外で31mを超える建築物
 は建物相互の距離を高さの平方根の1/2以上を確保すること。

E 12m以上の道路に面している場合を除き、各敷地毎の容積
 率の限度は、許容容積率の1.5倍以内とする。

F 区域内の見やすい場所に当該認定を受けた旨並びに通路の
 位置等を掲示板により標示する。

 隣地の容積を取得する場合が安いからといって、むやみに取
得するのは禁物です。容積取得には、いくつかのクリアしなけれ
ばならない項目があるのです。

 まず第一に検討することは、自分の敷地で取得する容積を法
的に消化できるかということです。
例えば指定容積率600%の商業地域内に、4m道路に面した裏
敷地Aと、同じ敷地面積で12m道路に面した表敷地Bがあったと
します。

 Aの敷地では、4m×0.6=240%しか建てられませんが、B敷地
と連担する事により600%まで容積率がアップするため、余剰容積
の360%(600%-240%)をB地に売却したいという申し出があった
とします。
 しかし、B地の許容される容積率は、東京都の場合600%×1.5
=900%のため指定容積率との差の300%(900%−600%)しか
隣地容積を取得する意味がありません。360%を取得しても全て
を使いきれないのです。このようにやみに容積を購入してもムダ
になる可能性があるので注意を要します。

第一の問題をクリアすれば、次に検討することは、道路斜線
制限をクリアできるかということです。

幅員12m道路に接している場合には道路境界いっぱいに建
物を建てようとすれば18m(12m×1.5)以上の高さ部分はセット
バックが必要となるため、階高を3mとすれば6階以上の階はセッ
トバックしなければいけません。

 建物は敷地一杯に計画したとしても、現実には施工上からも90
%程度になり7階より上の階をセットバックしたとしたら10階建て
でも700%程度の容積率しか消化できません。そのため隣地の容
積を300%取得して900%の容積の建物が可能になったとしても
セットバックを考えると15階建てになってしまうかもしれません。
 さらに容積移転の要件として通路の確保などが要求されると敷
地全体に建物が建てられなくなるため現実には900%の容積を
消化するには20階建てになるかもしれないのです。

 このようにして建物の高さが高くなると建築コストにも大きな影
響がでてくるので注意が必要になります。

 都心部のように土地コストが高い地域では建設費のアップ分程
度は土地コストの低減分でまかなえますが、地価の安い地域で
は建設費のアップ分を土地でまかないきれないでしょう。

 このように、容積を取得するときには建築的に検討しなければ
ならない項目が多く、建築の専門家に検討を依頼する必要がで
てきます。そして、専門家の意見を十分にふまえて取得した容積
率とその価格について隣地と交渉することが必要といえるでしょ
う。

UNI Total Planning Co.,Ltd.